「相続」とは、ある人が死亡したときにその人の財産(すべての権利や義務)を、特定の人が引き継ぐことをいいます。
私有財産制を採用している社会においては、人が死亡した際には、その財産を誰かに継承させる必要がありあます。さもないと、その人が亡くなった時に、その財産は主を失い無主物となってしまいます。民法では、無主の動産は、先に占有した者が所有権を取得し、所有者のない不動産は国庫に帰属するとしています。亡くなった人の財産が国に帰属するとなると、私有財産制と矛盾するため、民法では配偶者と子どもといった一定の親族関係にあった者が引継ぐことになっています。
民法では、亡くなった人を「被相続人」、財産を継承する人を「相続人」といいます。
相続は、人の死亡によって開始します。つまり、被相続人の死亡という事実があれば当然に開始し、被相続人の死亡を相続人が知っていたかどうかを問わず、相続人は被相続人の財産上の権利義務を当然に承継することとなります。
相続人が複数人いる場合は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継し、相続財産は共同相続人間の共有となります。この共有状態を解消し、具体的な配分を確定させるために、遺産分割協議を行います。遺産分割協議は、相続人全員で協議し、それぞれの事情に応じて分けることができます。どのように分割をするかは自由です。民法の法定相続による割合で分割しても、法定相続分と異なっても構いません。ただし、被相続人が遺言によって遺産分割方法の指定している場合は遺産分割協議を行うことを要しません。
この協議の方法に特別な方法があるわけではありませんが、次の点は気をつけなければなりません。
①相続人全員が参加して協議を行うこと
遺産分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に認知症の方がいる場合は、成年後見人を選任し、その参 加も必要です。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その協議は無効となります。
②協議の結果を書類に残すこと
また、あとで問題が起こらないよう、「誰が」「何を」相続するのか協議結果を書類に残すことが必要です。この書類のことを「遺産分割 協議書」といいます。
遺産分割協議書は、預貯金の解約、名義変更手続き、不動産の登記申請、相続税の申告などに添付することが必要です。
所有者不明土地問題の解決を図るため、民法が改正され、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続(遺贈も含む)により不動産を取得した相続人は、相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないことになりました。この改正は、令和6年4月1日以前の相続にも適用されます。この場合、施行日(令和6年4月1日からから3年以内、つまり令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。 「正当な理由」なしに3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料を科せられることもあります。相続人が複数いて、遺産分割が終わっていない場合は、遺産分割協が必要になります。
行政書士は、相続人や相続財産の調査、遺産分割協議書や遺言書の作成支援,各種財産の名義変更手続きなど相続に関する業務を幅広く行うことができます。相続手続きに関しお困りの方はご相談ください。